炊きたてのホカホカご飯は美味しい。
しかし、常温の冷やご飯の方がさらに美味い!(注1)
良く噛んで味わって食べると、冷やご飯の方が、甘みも旨みも強く感じるのだ。弾力ある食感もいい。
(写真:大抵は塩とゴマをかけて食べるが、塩とゴマなしでも美味しい。ご飯の味だけを堪能したいので、基本的には漬物やおかずなどと一緒に食ることはしない。カレーの時もご飯とカレーとを別々に食べる。)
炊きたてであれ、再加熱であれ、温かいご飯には、温かみや柔らかさなど、その美味しさや価値はある。
だが、甘みや旨みの強さにおいては、常温の冷やご飯の方が勝っていると思う。(注2)(注3)
この事実に気が付いた時、まず、思い至ったのが、エネルギー消費の問題だ。
常温の冷やご飯が美味しいのに、わざわざ温め直して食べるのはエネルギーの無駄だろと考えることもできる。
おそらく、手間をかけて、竈(かまど)でご飯を炊いていた昔は、一日一度、炊飯し、あとは、おひつに入れた冷やご飯を食べていたのではないだろうか。
炊飯器でご飯を炊くようになってからも、保温機能や温め直し機能付きの炊飯器、電子レンジを使用するようになる以前には、冷やご飯を食べることが多かったのではないだろうか。
ご飯だけではない。
ホームベーカリーで焼いたパンも、味の濃さという点では、焼き立てよりも時間が経過したものの方が勝っている。
唐揚げなど、おかずの類も、ある程度温度が下がったものの方が、じっくり良く噛んで食べると美味しさを強く感じる。
温めることには価値はあるだろう。
しかし、温かいことは、美味しさの価値の一部に過ぎず、味そのものを堪能することを妨げる要因になることもあると思う。
実際、炊きたてのご飯を食べる際には、「炊きたて」であることに意識が向き、味そのものへの意識が薄くなる。味に意識を集中させて炊きたてご飯を味わうと、冷やご飯ほどの旨みや甘みは感じられないのだ。
ここにまで考えが至ると、ホカホカの弁当を販売することや、電子レンジによる弁当の再加熱サービスをすることが当たり前のことのようになっている現状は、膨大なエネルギーの無駄のように思えてくる。
食事はホカホカの方が美味しい。
温かい食事が本来あるべき姿だ。
このような意識、志向、考え方、価値観は、普遍的なものではなく、知らず知らずのうちに刷り込まれてきたものに過ぎないような気がする。(注4)
ホカホカ呪縛から解き放たれた時、再発見できる美味しさがある。
エネルギー消費の見直しもできる。
食生活はじめ、生活全体、社会の在り方の問題の見直しにもつながるだろう。
過去に学び直し、未来への新たな道を拓くことにもつながるだろう。
僕はそのように考えている。
理屈はともあれ、常温の冷やご飯の美味しさを堪能している。冷やご飯は美味い!(注5)
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注1:一定時間以上冷蔵庫内に入れておいたものは乾燥して美味しいとは感じられない。
注2:冷やご飯の美味しさについては増上寺・79代法主・道重信教が語った次のような言葉や良く知られているようだ(子母澤寛『味覚極楽』)。
”飯じゃがね、これはつめたいに限る。たきたてのあたたかいのは、第一からだに悪いし歯にもよくないし、おまけに飯そのものの味もないのじゃ。本当の飯の味が知りたいなら、冬少しこごっている位のひや飯へ水をかけて、ゆっくりゆっくりと沢庵で食べてみることじゃ。この味は恐らくわしのような坊主でなくては知るまいが、うまいものじゃ。”
(引用は、次の①の投稿記事からの孫引き)
①「お冷やご飯のこと」(「株式会社 坂ノ途中 HP コラム」2018/12/03投稿記事)
https://www.on-the-slope.com/articles/column/withveg/articles-59746/
②子母澤寛『味覚極楽』(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%91%B3%E8%A6%9A%E6%A5%B5%E6%A5%BD
注3:なぜ、冷やご飯の方が、甘いや旨みが増すのか。その理由を知りたいと思い、Web上で少々調べてみた。温度によるデンプンの変化、噛み方の違い等が関係しているのではないかと推測できたが、得心のゆく説明には、未だ辿りついていない。
次の③など、冷やご飯の『レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)』が腸内環境を良くするなど、冷やご飯を良く噛んで食べることがダイエット効果、便秘解消、代謝促進など健康に良い働きをするという記事もあった。
③「冷やご飯はダイエットの味方!?秘密は大腸まで届く「レジスタントスターチ」」(「腸活ナビ」)
https://www.biofermin.co.jp/chokatsu_navi/article/2022052001.php
注4:次の④の記事には、
「冷やご飯がうまい」という道重信教の言葉は、常識にとらわれていると真実が見えなくなること、ものの見方を変えることによって新しい何かを発見することもあるということを伝える言葉ではないかという解釈が書かれていた。
④「道重上人(道重信教)の言葉『やっぱ冷や飯が一番うめぇ』」
(Ficino Campanellaさんのブログのおぼえがき 2014年02月05日)
https://ameblo.jp/alienor-daquitaine/entry-11765573105.html
注5:これほど明確に、冷やご飯の美味しさを感じるのは、美味しい無農薬の玄米や分づき米を食べているからかもしれない。