「お前は誰も殺すことはありません。誰もお前を殺してはならないのです。人は殺したり、殺されたりするために生まれてきたのではありません。行きなさい。この国から離れなさい。」
エンリケはアルゼンチンに脱出。18年間亡命生活をした。
エンリケを戦争に行かせなかった母について、カザルスは次のように述べている。
「母は息子の命を救おうとしたのではない。間違ったことはしない、正しいと思ったことをする、という原則を守っただけなのだ。母はいつもこう言っていた。特定の法律はある人たちを守りはするけれど、他の人々には危害を与えることもある。法律ですら、善悪の判断は自分でしなければならないと…。もし、世界中の母親が息子に向かって、私の母と同じことをしたなら、世界から戦争はなくなるだろう。」
そう単純ではないかもしれない。しかし、平和と戦争について深く考える1つの契機になるエピソードだと思う。
「なぜ、人は戦争に行くのだろうか?」
「戦争は起こるのではなく、起こされるというが、だれが戦争を起こすのか?」
「戦争で得をする人たちがいるというが、どのような人たちが得をするのか?」
※ここで紹介したエピソードはTV番組「知ってるつもり・パブロ・カザルス」で放映されたもの。カザルスやピラールの言葉は番組の字幕を起こしたものである。文献にもとづいて番組は制作されていると思っているが、文献での確認は私は行っていない。