カシコレラ

高校教員を早期退職。「人生は実験だ」を合言葉に妻と信州に移住。 農・DIY・お金稼ぎの経験皆無の凡人が自給的暮らしを探求中。気ままにあれやこれや投稿。ひととひと、農と環境と教育をつなぐ「虹色ラボ」、真に持続可能な暮らしと生き方研究所「いっさ」主宰。

人権としてインターネットが無料で利用できる社会

Zoom等インターネットを利用して、概ね16~20才の若者に「在宅学習を補完する学びの場」を「無償提供」できないかと、さまざまなことを調べたり、学んだり、思索したりしている。

私が個人的に「無償提供」を強く意識しているのは、これまでの人生で得た知識と経験から、学習塾や趣味的習い事などは別として、人間として生きるために必要な学びに私的金銭負担が生じることに違和感があるからだ。その負担額が大きくなれば経済的不平等に直結する問題にもなる。

思い至ったのがZoom等インターネット環境が整備されていなければ「無償」提供サービスも利用できない問題点。とりあえず、現時点では、その問題には目をつぶるしかないだろう。しかし、パーソナルコンピューターであれ、スマートフォンであれ、インターネットを暮らしに位置づけることを前提にする社会ならば、本来は、それを誰もが平等に利用できる権利を保障する必要があるだろう。

かつて本で読んだスペインのマリナレーダ村のことを思い出した。住宅、保育園、文化施設など、人権保障に関わるものが、村人に無料もしくは低価格で提供されているという事例だ。例えば、建設に参加すれば、立派な一戸建ての家を建ててもらうことができ、月額15ユーロ(当時の為替相場で2250円程度)で住むことができる。自宅でのインターネット利用も住民の権利として無料だと書かれていた(工藤律子『雇用なしで生きる~スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦』2016)。
https://www.iwanami.co.jp/book/b262554.html

尚、高校も大学も無償であることが世界的な潮流である。

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(参考)

世界人権宣言(1948年に国連で採択)の実効性を高めるため、
1966年、多国間条約として国際人権規約が国連で採択された(1976年発効)。
この国連人権規約の社会権規約第13条には教育についての権利が記されており、
中等教育(中学・高校)と高等教育(大学等)について、
段階的に無償化して、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること、と明記されている。

しかし、日本政府は、1979年、国連人権規約・社会権規約を批准したものの、
この条項(中等教育と高等教育の無償教育の漸進的導入)については留保を付した
(つまり、中等教育と高等教育の無償教育の漸進的導入については受け入れないと表明)。


2008年、この条項を留保していたルワンダがこれを撤回。
2009年、当時、社会権規約批准国160か国中、
この条項を留保しているのはマダガスカルと日本のみとなった。

こうした中、
2010年、高校について、いわゆる「高校無償化法」が成立、施行。
2012年、日本政府は、高校・大学の段階的無償化の留保撤回を国連に通告した。

(メモ)
読んでみたいと思う本:
三輪 定宣 『無償教育と国際人権規約―未来をひらく人類史の潮流』 2018
https://www.amazon.co.jp/%E7%84%A1%E5%84%9F%E6%95%99%E8%82%B2%E3%81%A8%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E4%BA%BA%E6%A8%A9%E8%A6%8F%E7%B4%84%E2%80%95%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%82%92%E3%81%B2%E3%82%89%E3%81%8F%E4%BA%BA%E9%A1%9E%E5%8F%B2%E3%81%AE%E6%BD%AE%E6%B5%81-%E4%B8%89%E8%BC%AA-%E5%AE%9A%E5%AE%A3/dp/4406062653